
自動車学校グループが副業人材を活用して、短期間に社会福祉施設の開所、DXを実現。
サービス業 × 福祉サービス人材 他
株式会社くまもとKDSグループ @熊本県熊本市
- 副業・兼業者
- 福祉サービス:30代男性(福岡在住) 人材サービス業 他4名
- 契約形態
- 業務委託
- 業務内容
- 就労支援施設の立ち上げ 等
熊本県内で2校の自動車学校と、フォークリフトの技能講習所を運営していた株式会社くまもとKDSグループ。ITなどの人材を活用して業務改善に取組むとともに、福祉分野を専門とする人材の支援を受けて、2022年4月に社長の念願だった就労支援施設の開所も実現しました。
副業人材を活用した背景について教えてください。
きっかけは九州財務局の「活性化フォーラム」に参加したことでした。その時のフォーラムのテーマは副業・兼業人材の活用について。既に活用実績がある鹿児島の企業の事例を聞いて、「こんな人の活用の仕方があるんだ」と衝撃を受けました。昔はビジネスにおいても情報面においても、東京と福岡では数か月、福岡と当社がある熊本ではさらに数か月、といった感じで地方の企業は東京より後れを取っていたんです。それを、福岡を経由せず、東京や大阪、大都会で働いている方から直接指導を受けられるなんてすごいなと思いましたね。その後すぐに副業人材の募集を決断しました。
依頼する内容はどのように決めましたか?
マーケティングや広報、IT化など、依頼したい内容はたくさんありましたし、当社では発達障害を持っている人の自動車運転免許取得をサポートするコースがあるんですが、自動車運転免許を取って終わりになってしまって、その後の社会参加までサポートできないことは前からすごく気になっていたんです。自動車運転免許取得をきっかけに、本人に自信がついて就職、自立できれば本当の意味での「社会貢献」になるのではないかと思っていたので、その辺の知識がある人にも出会いたいと思っていました。
どうせやるなら最先端で活躍している方に教えてほしいと思ったので、副業マッチングサービスの担当者にも入ってもらいながら、私の方で人材に頼む業務を整理。就労支援施設の開設やWebリニューアルといった、5つの業務をお願いすることにしました。
求めていた人材の要件はありますか?
頼みたい業務は整理しましたが、それ以外はあまり細かい条件をつけず、まずは広く募集して、色んな人から意見や提案を聞こうと思いました。ただ、どの業務も専門知識が必要なので、専門性を持っていることはもちろんですが、私たちがわからないことに対しても、根気よくわかりやすく説明してくれる人がいいとは考えていましたね。

くまもとKDSグループ 永田社長
面談時のポイントや採用した決め手について教えてください。
募集をかけるとすぐに30件ぐらい集まったので、正直びっくりしました。とにかく話をして選びたかったので全員とオンラインで面談しました。大変でしたけど、私は新しいことが好きなので、色んな話が聞けて楽しかったですね。面談では私の考えや実現したいことをお話し、人材には、それぞれ依頼予定の業務に対して、求めることを実現できるか?どの程度の期間でできるか?と、副業を行っている目的を質問しました。私が社長を継いで13年ぐらいたちますが、私の当初からの経営理念は「社会貢献」なので、人材にも、業務を遂行できるかだけでなく、「お金目的じゃない」ことを求めましたね。
最初の面談はすべてオンラインで行いましたが、各業務1名、5名の方にはあらためて熊本まで来てもらい、契約面など、詳しい話をしました。1名は海外に住んでいたので、来られませんでしたが、他の方は一度は熊本に来てもらっていますね。
どんな形で支援をしてもらいましたか?活動期間・内容、契約形態について教えてください。
契約が決まるまでは私の仕事でしたが、それ以降は人材と当社の社員でチームを組ませて、現場の社員に任せました。私は社員から定期的に報告を受け、契約終了の判断をしたぐらいです。支援の方法はそれぞれの人材にお任せしましたが、それぞれがオンラインで面談を行ったり、時には現地まで足を運んでくれたり、あとはメール等のやり取りをしながら支援をしてくれました。
契約した5人のうち、1人とはちょっと方向性にズレがあったため、早期に契約を解除しました。あとの人材には3ケ月から6ケ月のプロジェクトを進めてもらい、目標が達成できたので、契約を終了しました。でも、1人だけ、今でも当社の運営に関わってくれている方がいるんです。福祉分野の経験、知識があって、当社が2022年に立ち上げた就労支援のための新法人「株式会社KDSコミュニティカレッジ」の設立に全面的にバックアップをしてくれた方なんですが、現在では副業という形ではなく、準社員のような感じで同社に関わってもらっています。
人材と社員の関わりについて教えてください。
実際のやり取りはほぼ、社員に任せっきりでした。人材1人に対して、3人程度の社員がつき、チームを組んで人材から指導をしてもらいながらプロジェクトを進めました。まったく違う世界で働いている人と、自分たちの知らないことに取り組むわけですから、最初は驚きが大半だったと思います。でも、人材の能力も高いですし、都市部の第一線で働く人材へのリスペクトもあって、社員たちも納得して教わってくれたので、今では大半の業務を社員たちだけで行えるようになりました。
一方、人材側も20代、30代と若い人が多く、自分の勤める大手企業では自分の意見はなかなか通らないけど、副業先では自分が提案したことをすぐ「やりましょう」と言ってもらえる、そして支援がすぐ結果に結びつく、という形でやりがいを感じてくれていたみたいです。
どのような業務を任せましたか?
人材には会計ソフトの導入や、LINEでの教習予約機能、Webサイトの刷新など、色んなことを支援してもらいました。これまでも広告代理店をはじめ、色んな業者と付き合いがありましたが、SNSで利用できる機能や導入方法まで教えてくれる方はいなかったので、本当にありがたかったですね。
社会福祉施設の立ち上げでは、人材が施設運営の仕組みづくりや、施設開設や営業リスト作成に必要なタスクやスケジュールをガントチャートに整理しました。社会福祉施設の運営経験がなく、施設の立ち上げも初めてだった施設管理者を導き、開所までスムーズに進めることができました。

人材と立ち上げた就労支援施設と、施設管理者の有田さん
成果はありましたか?また、課題点についてもあれば教えてください。
成果は大いにあったと思っています。例えば、会計クラウドサービスの導入はとても画期的でした。社内から伝票がなくなって、領収書も写真を撮って管理ができるようになりました。担当社員の一人を別の業務に回すことができましたし、業務効率化が図られました。今ではグループ内の5社すべてに同じ会計クラウドを導入しています。若者に馴染みのあるLINEで教習予約ができるようになったのも大きいと思います。また、ホームページを改修したことでアクセス数も上がり、当校の認知も拡大しました。発達障害の方向けの自動車運転免許取得プランは定員を超え、待ってもらうお客さんも出てきたほどです。
そして、一番大きいのは就労支援施設の運営を行う別法人「KDSネクストカレッジ」の設立だと思います。私は福祉分野のプロではないので、法人設立から従業員の募集まで、あらゆる部分を人材にお任せしましたが、彼がいなければ絶対にここまで来られませんでした。それを立ち上げ時に3度、開所後に2度現地に来ただけ、あとはリモートで、経験のないスタッフを引っ張りながら施設の開所までこぎつけてくれたのだから、本当にすごいと思います。現在でも週1回程度、従業員の教育や、事業所全体の監修者として関わってもらっています。
あえて課題を挙げるとすると、選考が大変だということでしょうか。私は自分で募集から面接、決定まですべて行ったので手間もかかりましたし、実際のところは一緒に働いてみないと分からない。友達の経営者にも副業人材の活用を勧めましたが、やはり人選は苦労したみたいです。ただ、私がやりたかったことは彼らがいたから実現できたと思っているので、当社にとって副業人材の活用は良いことばっかりでしたね。