仕事・体制づくりのススメ
副業・兼業人材に活躍してもらうためには、
「活用する」意識と準備が大切。求人の作成
課題・実現したいことを整理して求人を作る
POINT:何を実現したいのか、1人の人材に対してテーマ・課題を1つに限定しましょう。
解決したい課題は何なのか・何を実現したいのか、募集前に現状の整理を行って目標・ゴールを明確にしておくことで、副業・兼業人材から課題に対して何をすればよいか具体的な手法の提案を受けられるようになります。さらに、フィールドや目標が明確になっていることで副業・兼業人材が自身に合った案件か判断できるだけでなく、中身のある提案もできるようになるため、課題(実現したいこと)は1つに絞っておくことが重要です。「課題を明確にできない」「課題に優先順位がつけられない」という場合は、副業・兼業人材に課題の整理を依頼することもできるため、それも一つの課題と捉えておきましょう。
よくある課題の例
- 1. 課題と打ち手を整理したいが、一人ではうまくできない。
- 優先順位が付けられない。何から手を付けて良いかわからない。うまく言語化ができない。
- 2. 人材確保を強化したいが、自社にノウハウが無い。
- 人事の専門家がいない。見よう見まねでやってきた。属人的な人事評価制度を変えていきたい。
- 3. 販路開拓に取り組んでいるが、営業がうまくいっていない。
- 場当たり的な営業になっている。ターゲットや打ち出し方が正しいのか判断できない。ロジカルな戦略が組めない。
- 4. デジタル化を進めたいが、ITに詳しい人間がいない。
- 高齢の従業員が多く、IT化が難しい。何からIT化すべきかわからない 。高コストのイメージが強く手が出せない。
- 5. 新規事業を始めたいが、マーケティングがわからない。
- やり方がわからない。その事業で戦えるかどうかの情報が乏しい 。やってみたいが成功のイメージがつかない。
- 6. ECを始めたが、思うように売上が伸びていない。
- 運営する人がおらず放置されている。どこをどう工夫すれば売り上げが伸びるのかわからない。
- 7. メディアに取り上げられたいが、PR 方法がわからない。
- そもそもやり方を知らない 。 SNS 等どう活用したらよいかがわからない。どのやり方が正解なのかを判断できない。
企業・経営者の想いをこめる
POINT:副業・兼業人材は想いに共感できる企業での副業を求めています。
副業・兼業人材の多くは副収入が目的ではなく、自身のスキルアップややりがいを求めて副業先を選んでいます。「面白そうな事業に取り組んでいる」「企業理念に共感をおぼえた」「この経営者と一緒に仕事がしたい」などの理由で副業先を選定することが多いので、経営者の想いや企業の理念などを整理しておきましょう。創業時の想いや、今後どういった会社を目指すのか、どういった未来にしていきたいかなど、事業にかける想いや熱意を求人に書けるように整理しておきましょう。
POINT:地方創生・地元貢献目的の副業人材も多くいます。
地方創生に興味があり知見を活かしたい、地元企業に貢献したい。など、好きな地域のために働くことを目的として、地方での副業・兼業を探している人材も数多くいます。地域のために働くという、これまでは移住・転職でしかできなかった地元貢献・地方創生へに「副業」で挑戦する人材も増えているので、例えば、企業の発展によってどう地域を盛り上げていきたいかなど、企業の課題解決や実現したいことの先にある地域貢献への想いも伝えられるように準備しておきましょう。
選考基準の設定と面談準備
選考基準を決める
POINT:一緒に働くイメージができる人材を選びましょう。
自分が知らない知識・スキルを持った人材は魅力的に見えるもの。選考基準を決めずに面談を行うと、目移りするだけで決定できないこともありますので、事前にある程度選考基準を決めておくといいでしょう。
特に、副業・兼業人材とはオンラインでプロジェクトを進めることになるので、スキルや知見だけでなくプロジェクトに対して興味を持っているか、事業や企業に対して共感を持っているかも判断して人材を選ぶようにしましょう。また、やりがいを重視する副業・兼業人材は企業の事情も汲み取って実現性の高い具体的な提案を行う傾向があるため、面談時の提案がそうした具体性をもっているかも考慮して選ぶといいでしょう。
よくある選考基準(重要度順)
- 1. 共感
- 企業や事業、経営者の想い、地域への思い入れなど、自社や地域に対して共感を持っているか?
こうしたことに共感を持っている人材はプロジェクトにも主体的に取り組んでくれるため、選考過程でも共感を持っているかどうかは重要視しましょう。同じ方向を見て取り組める人材とは長い付き合いを構築できることもあります。 - 2. 提案の具体性
- 課題に対して具体的な提案を行っているか?企業の事情を汲み取った提案ができているか?
与えられた課題から具体的な提案を行ってくれるということは、課題に真剣に向き合って、課題を深掘りしたり企業のことを調べている証拠でもあります。提案前や面談の際に企業の事情や課題の背景などを質問してくる人材も、課題に真剣に、向き合っている人材だと言えます。一方で、一般的な理論だけを提案したり、企業の事情を考慮せずに提案していると感じられる人材はマッチしない可能性が高いため、人材のスキルや経験だけを見て判断することはおすすめできません。 - 3. コミュニケーション力
- 企業の実情を把握して実情に沿った提案をしてもらえるか、それには副業・兼業人材のコミュニケーション力が大きく影響します。都市部の企業の常識を「上から目線」で話す人材は合わなくなる可能性が高いため、企業の実情を丁寧にヒアリングしながら提案に生かしてくれる人材と出会うためにも、事前の課題共有や面談時に積極的に質問してくれる人材を選びましょう。
- 4. 熱意・人柄・主体性
- 本業を持っており、使える時間に制約がある副業人材の場合には、プロジェクトに対して熱意や主体性を持って取り組んでもらえるかが成功を左右します。主体的に考えながら仕事に前向きに取り組んでいる人材は、面談時の提案でも事前に調べて準備をしてきたことが感じられます。スキルや経歴のみで判断せずに、熱意や主体性を感じられる人材を選ぶようにしましょう。
- 5. 専門知識・スキル
- もともと専門性の高い課題を依頼するために副業・兼業人材に依頼しているので、知識・スキルは欠かせません。ただし、専門知識を重視するあまり柔軟性のない方を選んでしまうと、依頼したい業務にマッチングしないことが考えられます。共感や提案の具体性の方が重要なため、課題に対して最低限必要な範囲を超えて専門知識やスキルを重視しすぎないよう注意しましょう。
オンライン面談を設定する
POINT:オンライン面談の特性を理解して、面談を行いましょう。
オンライン面談はリアルの面談とは異なります。
対面で顔を突き合わせることががないだけでなく、画面で資料を見せながら説明しやすかったりPDF等の資料等を事前共有できるというメリットもあります。また、画面を共有して同じwebサイトを確認したり、その場で出た質問事項をチャットに転記しながら内容を双方で確認することもできます。こうしたオンライン面談のメリットを最大限に活用するためにも、紙媒体の資料しかないという企業は事前に資料を電子媒体化(PDF化など)しておきましょう。
一方、オンライン面談では細かい表情の変化が伝わりにくく相手が内容を理解しているかわかりにくいというデメリットがあります。副業・兼業人材が理解できないまま一方的に話を進めてしてしまわないように、内容を理解できたかの確認は細かく行うようにしましょう。
契約内容を決める
POINT:業務委託契約を念頭に契約形態・期間を定めましょう。
副業・兼業人材と契約を結ぶ場合には、雇用契約ではなく業務委託契約が適しています。さらに業務委託契約の中でも委託業務の完了(成果物)を前提とする請負契約と、業務の遂行そのものを目的とする準委任契約があります。あらかじめ解決したい課題や成果物が明確になっているという場合には兼業人材と請負契約を結ぶこともありますが、ほとんどの場合、契約時点では課題や成果物が明確になっていないので準委任契約を結ぶといいでしょう。
契約期間は依頼する業務に応じて設定します。明確なゴール設定とゴールまでの道筋ができている業務を依頼する場合には2~3か月程度、課題や目標は明確になっているが、調査や分析が必要だったり製作期間が必要なプロジェクトには半年~1年の期間を設定するケースがほとんどです。経営者の相談役となって、企業の課題整理から始めるという場合には1年以上の契約期間を設定しましょう。当初想定した契約期間を終了した後に、業務委託契約を巻きなおして期間を延長することもできるので、副業・兼業人材との相性をみるためにも契約当初から長すぎる期間を設定しないようにしましょう。
よくある契約期間の例
-
3ヶ月程度
明確なゴール設定ができているプロジェクトを依頼する場合
-
半年〜1年
目標は明確だが調査・分析・制作期間が必要な業務
-
1年以上
経営者の相談役として課題整理から始める場合
また、定めた内容は契約書の形にすることが必用ですが、仲介業者やプラットフォーム事業者を利用する場合には、事業者が契約書で押さえておくべき内容(契約形態・契約期間・報酬・機密情報の取り扱い等)を網羅したひな型を用意している場合がほとんどのため、契約書作成の手間を削減できます。自前で契約書を準備する場合でも一般的な業務委託契約書のひな型を転用できるため、契約書は必ず作成するようにしましょう。
POINT:提案時にどの程度の期間がかかるものか確認しましょう。
プロジェクトの内容や求めるゴールに応じて必要な期間も異なります。副業・兼業人材から提案を受けた際に、1か月にどの程度の稼働が必要か、プロジェクト終了までにどれくらいの期間が必要か、の2点を必ず確認するようにしましょう。
また、副業・兼業人材の質を見極めるために、2~3か月のお試し期間を設けるケースもあります。期限が決まっているプロジェクトではない場合には、副業・兼業人材とのマッチングを重視するのか、期間を優先するのか、契約期間を定める前に優先順位を決めておきましょう。
POINT:想定業務量に応じて報酬額を設定しましょう。
副業・兼業人材への報酬は、人材の質や使用する人材紹介会社・仲介業者によっても異なります。パターン1は月額3~10万円の業務委託の場合で、「月1回」「隔週に1回」「月1~2回」など打ち合わせ回数をベースに稼働時間を想定して月額を決定するケースが多くなっています。パターン2は月額10万円以上の場合で、業務の範囲・求める成果・稼働時間を詳細に決めてプロジェクトを開始し、契約期間中は仲介業者が進捗確認などのサポートを行うものが多いです。
報酬の大小で副業・兼業人材の質が大きく変わることはないので、何を実現したいのかを整理して、課題解決のためにどのような副業・兼業人材と契約すべきか考えましょう。
プロジェクト進行時
プロジェクトの進め方(開始当初)
POINT:何をどこまで頼むのか、面談時に副業・兼業人材に求める働きを明確にしていく。
副業・兼業人材に頼めることは意外と幅広く、分析や企画立案だけでなく社員とともに実際に手を動かす部分まで担当してくれる人材も多くいます。人材リソースの足りていない企業の場合には提案をもらっても実行できる社員がいないケースも多いので、副業・兼業人材がどこまで手を動かしてくれるのか、報酬と合わせて面談時によく確認しておくことが必要です。
副業・兼業人材から効果的なサポートが受けられるためには、面談前の準備として現状の課題をできるだけ把握しておき、面談の場で課題や目標を伝えましょう。そのうえで、副業・兼業人材の意見も踏まえて、何を依頼するのか、どのように関わってもらうのかを決めるようにしましょう。
A. 副業・兼業人材の役割設定
- - 伴走支援型 -
- 調査・分析から、戦略等の提案、助言、実行までを副業・兼業人材に依頼するケースです。副業・兼業人材は市場調査やデータ分析に基づいた提案と定例ミーティング等での助言を行います。プロジェクトにかかるすべての業務を副業・兼業人材だけで完結させないため、任せていた業務がブラックボックス化することもなく、社員の育成にもつながります。
また、副業・兼業人材の中には提案や助言だけにとどまらず、アクションの部分でも社員と一緒に実際に手を動かしてくれる人材も多くいるため、人材リソースの少ない企業ではアクションまで担当できる人材を探すようにしましょう。 - - プロジェクトリーダー -
- 副業・兼業人材をプロジェクトリーダーとして、社員とチームを組成して新規事業や事業の再構築を担当してもらうケースです。権限を与えて特定の領域を任せることで、積極的な情報収集や提案を行ってくれて新しいビジネスチャンスの発掘に繋がったり、人脈を活かした販路拡大なども期待できます。
また、副業・兼業人材は自身の専門分野でなくても広範な知識を持っていることも多いため、切り出しが難しい課題で副業・兼業人材に相談することで、課題の整理から優先順位付け、方向性決めまで一緒に進めていくことができます。
B. 人材の活用開始時に行うべき具体的活動
- - 相談・現状把握 -
- まずは課題の洗い出しや整理、優先順位付けなどの現状把握を行って、事業の方向性を決めたりマイルストーンを置いていきましょう。副業・兼業人材に企業への理解を深めてもらい、同じ目線で話ができるようになってもらうためにも、企業理解や現状把握は焦ることなく一定の時間(最初の1~3ヶ月)をかけて行うことが重要です。
面談前の課題の整理はできる範囲でかまいません。高い専門性や外部の視点を持つ副業・兼業人材と壁打ちを行う中で課題の本質が見えてくるので、課題の言語化や整理を繰り返していきましょう。また、この段階で想定していた課題よりも優先順位の高い課題に気づくこともあります。 - - コミュニケーションツールの活用・現地訪問 -
- オンライン打ち合わせだけでなくチャットツールも活用して、プロジェクトメンバー内で円滑なやり取りができるような体制を構築しましょう。定例の打ち合わせだけでは副業・兼業人材とのコミュニケーションが不足し、不明な点がすぐに解決できず無駄な作業が発生してしまうなど、業務が円滑に進まないということも起こります。グループで一斉に情報共有できるチャットツールなどのツールを導入して、情報共有にかかる時間と手間を削減しておきましょう。
また、副業・兼業人材に実際に現地に来てもらい、対面での打ち合わせや商品・サービスに触れてもらうことで、企業や自社製品・サービスへの理解、現状把握も深まります。オンラインだけでなく1度でもリアルで対面しておくと、その後のオンライン打ち合わせがより親密なものになり、プロジェクトをスムーズに進めやすくなります。
プロジェクトの進め方(進行時)
POINT:社員との副業・兼業人材のチームを結成し、ゴールと役割を明確化しましょう。
外部人材に頼みっぱなしでブラックボックス化してしまっては社内にノウハウが蓄積されず、社員のスキルアップも期待できません。副業・兼業人材と社員の間でプロジェクトチームを結成することで、社員の協力を得やすくなるだけでなく、ノウハウを社内に蓄積することができるようになります。また、会社全体に関係するプロジェクト等の場合には、直接副業・兼業人材と関わる関係者以外も副業・兼業人材の動きを知っておくことでプロジェクトがスムーズに進むこともありますので、副業・兼業人材と社員がコミュニケーションを取りやすい環境を作っておくことが重要です。
また、副業・兼業人材との間で目指す目標や与えられた役割の認識にずれがあると、有効な解決策が出てこないばかりか、予定していたスケジュールでプロジェクトが進行しない、といったことも起こりえます。限られた時間を有効に活用できるように、どのような役割を期待しているか、何を目標にして業務に取り組んでほしいのか、副業・兼業人材との間でしっかり目標を共有するようにしましょう。
C. 社員への共有と理解の促進
副業・兼業人材の活用が決まったら、社員とプロジェクトチームを立ち上げを念頭に準備を進めるといいでしょう。社員と副業・兼業人材のチーム組成は、副業・兼業人材のノウハウを社内に蓄積できたり、社外の人材と一緒に仕事をすることで社員のモチベーションが上がるという会社にとってのメリットがあるだけでなく、副業・兼業人材にとっても組織のメンバーとして接してもらえることでモチベーションに繋がることもあります。
初回打ち合わせを対面で行ったり、現地訪問時に社員との顔合わせの時間を設けたりして、副業・兼業人材と社員間でコミュニケーションが取りやすい環境を作っておくといいでしょう。
D. 副業・兼業人材のゴールや役割の明確化
ゴールと役割を明確にすることで、副業・兼業人材も自分のやるべきことがはっきりし、目標達成に向けた動きをイメージしやすくなります。副業・兼業人材の限られた時間を有効に使うためにも、双方で話し合いながら役割分担を明確にすることで、副業・兼業人材がどの業務に注力するべきかわかりやすい、動きやすい環境づくりを心がけましょう。企業側が一方的にゴールや役割を設定すると、副業・兼業人材の持っている技術やスキルを活かせなかったり、逆に詳細を何も決めずに業務を依頼すると、副業・兼業人材がどこまでコミットすればいいのか迷ってしまい時間ばかり浪費することにもなりかねません。
E. 副業・兼業人材のフォロー、社内リソースの確保
いくら技術やスキルを持っている副業・兼業人材であっても、孤立してしまっては力を発揮することができません。あなたの会社の業務フローやマニュアルをしっかり説明したり、社員が時間に限りのある副業人材の手となってフォローできる体制をつくるなど、同じ会社の一員として迎え入れることで、副業・兼業人材のスキルや知識を最大限に発揮できるようになります。
また、一緒にプロジェクトを進めることで社員にもノウハウが蓄積されていくので、いずれ副業・兼業人材に頼らない内製化への道もひらけます。すべて副業・兼業人材に任せっきりにすることなく、社員も含めたプロジェクトチームを編成するなど、一緒に取り組む環境づくりを心がけましょう。